あんこ

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のあんこのレビュー・感想・評価

4.1
端的に言うと三島由紀夫VS東大全共闘ではなく、三島由紀夫についての映画である。
自分は東大全共闘の過去映像を見たことがあり、討論の内容を期待し鑑賞した。しかしこの映画は三島由紀夫の著作から始まり、最後は彼の自殺についてを語り終わってしまう。
監督はこの討論の内容にあまり興味がなかったらしく、「東大全共闘と討論している三島由紀夫」の絵がほしかっただけのようだ。
芥と話していた事物と自分の関連付けなんかは論が深まっていく興味深い内容であったが、話の途中で映像を転換されてしまう。討論の精査をせずに、適当に小説家がずれた内容を話していることに重ねて終わらせてしまうにはあまりにももったいない。寂聴なんかは完全に三島についての思い出しか語っていない。
最初から三島由紀夫についての映画を作りたかったのなら、こんな題名にする必要は全くなかっただろう。東大全共闘についての語りも浅く、当時のメンバーをたった3人だけでこの組織を表現してしまうのはあまりにもお粗末だ。(芥氏がまだ存命だとは知らなかったが、彼の言葉ではなく存在のアピールだけに編集しているのは失望する)
途中で脚本か編集の方針が変わったようにしか思えない。

と、こんなにも不満たらたらなレビューのわりにスコアが高いのは、「三島由紀夫という人物として」の映画としたら面白い出来だと思うためである。もし題名が違っていたら、こんな肩透かしな憤りを感じることはなかったであろう。
あんこ

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