Wallace

エイブのキッチンストーリーのWallaceのレビュー・感想・評価

3.8

イスラエル系とパレスチナ系、ユダヤ教とイスラム教、事情のややこしい家庭に生まれたエイブは家族間でのルールに振り回されていた。料理が趣味で様々な国の食材を“融合”させて新たなる料理を生み出し、バラバラになりそうな家族を繋ぎ止めようと奔走する。
料理映画ではあるが一人の少年が人間としてのルーツに悩み、もがきながら成長していく物語としてかなり見応えがあった。

両家には人種、思想、宗教など様々な点大きな溝があり、それは暴力的に財産や祖国を歴史的背景によるもの。そう簡単に繋ぎ止めることは出来ない。
食事の席でみっともなく言い合う大人たちを眺める子供の気持ちとは。
キッチンストーリーとかいうよりはある少年とその家庭のお話。
音楽が素敵です。エンディングも素晴らしくてとても感動しました。

ラストの展開として
人の愛が人を救うというようなメッセージも込められていたように思う。傷つけるのも癒やすのもまた人なのだという。
もし人が思いやりと優しさを失い、皆が他者に無関心になってしまうとそれはきっと味気ない世界になるだろう
おせっかいだと言われても悲しむ誰かにそっと寄り添う気持ちを忘れないでいたい。
実際、現実では難しくても“物語”にこそ、そういう願いが込められているならまだ大丈夫だと思える。
憎しみ合うことはあっても人間の心の根底には思いやりや慈しみがあることを信じたい。
Wallace

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