月子

泣く子はいねぇがの月子のレビュー・感想・評価

泣く子はいねぇが(2020年製作の映画)
3.5
オンライン試写会にて。

大人になりきれていない主人公が絶妙にリアルで、目立たないけどこういう大人って少なくないんじゃないかと感じました。

地域の伝統であるナマハゲは、大人(父)から子へ受け継がれている文化として描かれています。神様であるナマハゲは、立派な大人しかやる事は出来ないものであり、主人公が犯したナマハゲでの大失態は、彼が大人にも父親にもなりきれていない事の表れだと考えます。

終盤に向けて自分の親世代(義父)がいなくなったり、父親としてのポジションが奪われる危機感を持ったりする事で、少しずつですが主人公に変化が見られます。その結論が全てラストシーンに現れていて、グッとくるポイントです。

主人公が妻に厳しいことを言われた時、ヘラヘラ笑うのも印象的でした。「泣く子はいねぇが」と言われて育ち、上手に大人になり切れなかった結果が、このヘラヘラなんだろうと考えると、少し皮肉。


主演の仲野太賀さん、メインで観るのは初めてでしたが、ナチュラルだけど繊細な演技が魅力的でした。
吉岡里帆さんも、美人だけど華やかさが消えて、田舎の女感が出てました。何か言いたそうに黙る表情が印象的でした。


秋田のナマハゲ文化を楽しむという面でも、観る価値のある作品だと思います。ナマハゲの醍醐味でもある、ギャン泣きする子供とそれを笑顔で見守る大人という温度差の構図だけで、私は楽しめました。
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