Omizu

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ベネズエラのOmizuのレビュー・感想・評価

4.5
ラテンビート映画祭2020
第93回アカデミー賞ベネズエラ代表作品に選ばれたドキュメンタリー映画。

端的に言えば傑作だと思う。

まず映像が非常に美しく美的センスがある。コンゴ・ミラドールという水に浮かぶ村というロケーションでもう勝ちは決まったようなもの。雷鳴の聞こえないけど不気味に美しく闇を照らす雷が印象的。

女性の視点から現在のベネズエラの縮図とも言えるコンゴ・ミラドールという村を描くのだが、構成が見事。

村長的立場のタマラは社会主義政策を打ち出す政権の支持者、村の学校の教師であるナタリは反対派。

タマラは社会主義を支持しながらも自身は土地や家畜を所有し富を蓄えている。しかし村の存続を考え市長や遠方の有力者に湖の浄化を頼み込んだりと村のことを考えているのは間違いない。

ナタリはタマラやチャベス支持者の妨害を受けながらも子どもたちを育てる教師。でも彼女は教師としての役割を果たしているかというと疑問がある。

政治によって分断されるベネズエラ社会を端的に描くにあたりすごく誠実だと思うし、更に女性監督ならではの女性軽視への批判的眼差しも挿し込まれドキッとする。村の美少女コンテストで誰一人嬉しそうではなくみんな目が死んでたのが印象的。13歳で嫁に出され、死産して「夫にまたつくってもらえ」と父親に言われても何の疑問も持たない。彼女たち自身が内面化してしまっているという危うさを感じた。

最後にはすっかり水は干上がり廃村になって荒れ果てたコンゴ・ミラドールが映される。タマラが豚が殺されるときに耳を塞ぐのも皮肉というか。

コンゴ・ミラドールという小さな村を映しながらもそれはベネズエラという国、更には南米、そして世界へと開かれたような作品でとても素晴らしい。構成の素晴らしさや感性の豊かさが胸を打つ傑作。
Omizu

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