カフェオレ

MOTHER マザーのカフェオレのレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
4.0
息子に全く非はないし、母親から愛されたい一心で命令に服従していたことはとても切なく、同時に強い親子の愛を感じた。

長澤まさみの演じた母親は確かにどうしようも無い性格をしていたかもしれないが、冒頭で「大学にも行かせてもらえなかった。妹ばかりに贔屓している」と言っていた彼女のバックグラウンドには、辛い学生時代や家族にも話せない程の挫折を味わった過去があったのかもしれない。
勉強しなかったのは自業自得だが、それに手を差し伸べる教師や友人がいたら最初からこの映画は全くの別物になっていたはずだ。
更に、経済格差の大きい日本だからこそホームレスになり、貧しい生活を送っていたのであって、充実した制度、どこか違う国であれば幸せな生活が送れたかもしれない。

阿部サダヲとの恋愛は、今回の映画の中だからクズ同士の恋愛に見えたが、内容だけ見れば愛し合った2人の切ない感動物語にも見えた。駆け落ち覚悟の恋という一面が見れたときには、情けないという感情より、純粋に愛の素晴らしさを感じた気がする。金という問題点がなければあの2人は運命の相手だったのかもしれない。

全てたらればの話であるため、何を言っても仕方ないのだが、目に見えるものだけが全てではなく、批判する点も見方を少し変えるだけで一変するものだと改めて感じた。映画はあくまで作品であるため、干渉の度合いは人それぞれだと思うが、「可哀想」「親として最低」という他人事が溢れる世の中だから何も解決しない。とも思った。