おかだ

ナイトメア・アリーのおかだのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
4.3
モテクーパーとデルトロ


アカデミー賞を前に、作品賞ノミネート作品が立て続けに登場するこの時期。
「ベルファスト」と同タイミングで日本公開に間に合った「ナイトメアアリー」は、「シェイプオブウォーター」や「パシフィックリム」でお馴染み、ギレルモデルトロ監督の最新作でございます。

シェイプオブウォーターやパシフィックリムに大いに感激した私ですが、『デルトロの真髄はホラー』と聞かされ続け、いよいよそれっぽい作品が映画館で見られると知り、いそいそと鑑賞してまいりました。


めちゃくちゃ面白い作品でございました。

ブラッドリークーパー演じるスタンが、自身の優れた洞察力に気づき、イカサマ霊媒師として成り上がっていくも、やがて自らの欲により破滅に陥っていくというシナリオは、奇しくも同日鑑賞した「ザバットマン」にも通ずるモダンノワールっぽいテイスト。
デルトロ監督お得意の奇形クリーチャーやホラーテイストは抑えめ、シェイプオブウォーターの系譜を引き継ぐような、生身の人間への嫌悪感やディス色が強めな作品。

イカサマ読心術で順調に成り上がっていくブラッドリークーパーが、次第に街の権力者や富豪といった怪物たちに飲み込まれ堕ちていく様や、ケイトブランシェット演じるファムファタルの存在などまさにクラシックフィルムノワール映画の系譜を辿る傑作。

そして序盤の丁寧な前振りが効いてくる円環構造、寓話的で何より恐ろしいオチも今作が迎えるべき結末としてはこの上なく素晴らしかった。


奇妙なサーカスの面々や、眼というモチーフによる寓話的暗示、白と赤のコントラストが見事なあるクライマックスシーンなどなど見どころたくさんで、150分強という長尺を感じさせない見事な作品だった。

間違いなくおすすめです。
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