アリュール

ライド・ライク・ア・ガールのアリュールのレビュー・感想・評価

3.9
一競馬ファンとして。競馬はギャンブルでありますし、れっきとしたスポーツでもあります。映画の中でスポーツとしての競馬が描かれていることがとても嬉しく思いました。ギャンブルにマイナスイメージをお持ちの方にも馬やジョッキーてかっこいいという視点を持ってもらえる映画じゃないかと思います。
わたくし競馬ファンと言っても新参も新参で、メルボルンカップの格やミシェルペインが勝ったことがあるというのは予告を見て初めて知りました。そしてフェイムゲーム出てたんですね。目黒記念本命だったので思い入れがある馬です。

さて映画ですが、内容的には非常に駆け足です。競馬だけに。
生涯を描くというよりもミシェルペインダイジェストといった感じでしょうか。なので、人物同士の描写が弱く感じ、例えばシスターが最後めちゃ応援しましたがそこまで絆深まったエピソードあったっけ?まー教え子だしそうなるか…。といったような、少し消化不良な点があること、それから合成シーンがショボすぎるとこが気になりました。

ですが、男性社会に生きる女性の苦悩と乗り越えるミシェルの成長の描き方は痛快でしたし、自分で道を切り開く強い女性像は今の世の中のテーマとしてきっちりメッセージが込められていました。また落馬がいかに危険でジョッキーが命がけの仕事であるかが説明されているのが理解を深めさせてくれて良いと思いました。その後字幕で7回の落馬とありましたが作中かなり深刻に描かれていたリハビリシーンを観ている観客は落馬で娘を失くしたお父さんにとってほんとに辛い7回だったんだろうなと想像させられます。

レースシーンに実際の映像が入るのも良いですね。ミシェルのかっこよさや、現場の興奮が演出による誇張ではないことが強調されています。メルボルンカップの勝利の瞬間にもたくさん実際の映像が使われていますが見ているこちらもあたかも陣営の一人かのように一緒になって興奮できます。映画内でプリンスオブペンゼンスのオッズは101倍としか言われていませんでしたがオッズ順でいうと24頭中最下位人気でした。日本の競馬でもそんな馬が勝つというのはG1レースはおろか平場のレースでもほぼ起こり得ないことです。(起こるとヤフーニュースに上がります)それを女性ジョッキーが史上初めてやってのけた。現場の興奮は役者の演技では絶対に表せないのです。現実は小説より奇なりといいますが競馬では時々嘘みたいな奇跡が起こるものです。その興奮を伝えるため実際の映像を持ってくる演出は素晴らしかったと思います。ただ、最後の直線のシーン、ミシェルの位置が非常にわかりにくい!実際の映像もカメラ位置が遠いのと画質のせいで勝負服もわかりにくいし、探してるうちに映画映像に切り替わってしまって全体のどの辺にいて今どこ通っているのかなどミシェルとプリンスオブベンゼンスを目で追えないのが残念でした。

このレース日本の馬も勝ったことがあります。2006年デルタブルース岩田康誠です。オーストラリアで知ってる日本人はいるかとインタビューすると名前が上がったそうです。日本人でも競馬ファン以外は知らないような岩田騎手の名前が上がる。それぐらいメルボルンカップで勝つということは栄誉なことだとこの事実からもわかります。