概念としての佐々木
U-NEXTの余りポイントを消化すべく、以前から気になっていた「佐々木、イン、マイマイン」を鑑賞。
平日の夜に3時間弱の西部劇は観れない。
うすた京介とかが描いてそうな一昔前のジャンプに載ってるギャグ漫画みたいなふざけたタイトルですが、その実は非常に誠実かつ冷静な脱モラトリアム系ジャンル映画の傑作。
27歳のフリーターとして燻っている主人公を演じた藤原季節は、今作とも近しい空気感を持つ「くれなずめ」にも続投しています。
そんな彼が、仕事に演劇に彼女に、全てが不完全燃焼な今の日々とは対照的で眩しかった学生時代を回顧しながら今と向き合っていくまでのお話でした。
「くれなずめ」でも、というよりこの手の多くの作品に見られるような、現在と主観的に回想される過去との曖昧な輪郭を補強するカメラワークの違いは特徴的。
そして、学生時代にクラスのお調子者として目立っていた佐々木の死という形でもって、ある意味そんな青春時代の影との決別というイニシエーションを迎えるというクライマックスですが、そうした意味でも、佐々木という人物はキャラクターというより、極限まで記号化された青春時代のモチーフとして存在していたことが分かる。
家庭事情に闇を抱えながら明るく振る舞っていた彼に対する自身の後ろ暗さであったり、あるいは結局は地元から出られず何者にもなれなかった彼と、対照的に可能性の塊でもある赤ん坊というモチーフ。
それらのモチーフも絡めつつ、極めて映像的に語られてきた藤原季節の変化と、そして彼が、これも印象的に繰り返しインサートされていた学生時代の電車と並走するチャリ爆走シーンとは反対向きに駆ける終盤だったり、地道に積み重ねられてきたものが落ち着くべきところに落ち着く展開が素敵。
もちろんあの当然迎えるラストシーンもとても良かったし。
それこそ「くれなずめ」でも散々触れたような、あの無邪気でしょーもない男子学生がワイワイ集まってるホモソーシャル感、今作の方がややリアルで、また役者もそこまで綺麗じゃないので、この辺りの抗体の強さが今回も評価の分かれ目になるかもしれない。
個人的にはとても楽しめました、おすすめです。