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TOKYO TELEPATH 2020のSのレビュー・感想・評価

TOKYO TELEPATH 2020(2020年製作の映画)
4.0
 とても正確に東京を切り映した現代の風景映画だと思った。

 けばけばしい演出がSFとドキュメンタリーの閾を探っている。東京の都市には電子音や騒音がよく似合う。イメージフォーラムから宮益坂を下ってスクランブル交差点に向かっていくなか、広告か何かの音声やiPodで流す曲、モダン調の建物のガラスに乱反射して光学的な雰囲気を増幅させている東京の風景を見て、この映画が正確に東京の都市を写し撮っているという印象はますます確信に変わっていく。東京の都市は非人間的な風景である。都市を歩く者は、したがって非人間的になっていき、それゆえに本作は非人間的な映画の様相を見せる。

 ところで作中において夏祭りの場面があり、どうも全体から浮いてみえたのだが、よくよく考えてみると祭りとは非日常の空間であり、ケと対比されるハレの舞台、つまり祝祭である。非人間的であることと非日常であることは同じではないが、個人や生活などの日常的感覚が忘れられるという意味ではどこか通底しているものがあるかもしれず、それでも何か違和感が拭いされないのは、2020年、わたしたちの夏からは祭りが失われてしまったからだったと思う。コロナ禍ゆえに、寄り集まって盆踊りを練り歩く祭りの空間をノスタルジーなしには見られなくなっている。それは、非日常の空間でありながら、わたしたちの失われた日常の一部をすぐれて表象しているのである。

 監督によれば、本作はもともと10分程度の短編として構想されていたもので、続く長編の習作のような位置づけらしい。たしかに短編のパッケージだろうと思って観ていたので、どこか中途半端な感じも否めない本作を引き継ぐ次作を楽しみに待っている。
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