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すずしい木陰のkakakaのレビュー・感想・評価

すずしい木陰(2019年製作の映画)
3.6
静と性の映画。

木陰でハンモックに寝ころび、まどろむ女性を、定点カメラでひたすら観測するだけの実験映像だ。
特に物語はない。
鳥のさえずり、虫の音、風音、遠くに聞こえるディーゼルエンジンの低い音、ボーリングの杭打ちも聞こえる気がする。
鬱蒼とした森の中、背景には少し人工物が見えるが、同じ画面を注視していると、まるで世界が滅んだような、あるいは世界の最果てを見ている気さえしてくるから不思議だ。
女性はひたすらハンモックの上でまどろみ、寝返りをうち、背伸びして、その度、ハンモックは軋み、たわみ、うごめき、その姿形が一種ミノ虫ような、幼虫のように見える瞬間がある。
そして、彼女は時々、カメラを見つめる。目が合う気まずさ。
カフカの「変身」のような、あるいは江戸川乱歩の特定の短編が内包するマゾヒズム的なフェティシズムを本作に感じた。
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