糸くず

かげろう侍の糸くずのレビュー・感想・評価

かげろう侍(1961年製作の映画)
3.7
陸の孤島となった箱根の宿での連続殺人ミステリーだけども、謎解きよりも、次々と現れる多彩な脇役たちが魅力的。特に島田竜三演じる子連れの貧乏浪人がいい。

もちろん市川雷蔵演じる切れ者の遊び人&中村玉緒演じるドジな推理マニアの許嫁コンビも快調で、二人とも持ち前の軽やかさが存分に発揮され、生き生きとしている。

ミステリーとしては、事件の原因であるお家騒動の構図自体は単純なのだけど、犯人と被害者の関係が意外と複雑にできていて、しかも脇役たちの怪しげな行動ひとつひとつにもちゃんと意味があるので、けっこう集中して見ないと話が追えなくなる可能性があって、ちょっとせわしない感じ。

でも、役者のよさと撮影・照明・美術の素晴らしさのおかげで、退屈することはない。この時期の大映の時代劇はみんなそうなのだけど、影の描写の美しさ・かっこよさがやはり絶品。

ところで、感想で「終盤はヒッチコックのある映画のオマージュ」と述べている方がいるのだけど、今後の参考のために、何のオマージュなのかそっと教えてほしい。
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