じゃれているのかケンカしているのか、キーキー鳴きながら"だま"になっていた子豚たちが、母豚が起き上がった瞬間に一斉に後ろについて動き出す。あるいは、鶏たちが首を左右に振りながら一歩一歩茂みを掻き分けていく。片足しかない鶏はくぐれない金網の隙間に首を突っ込んで向こう側を見つめる。こうした家畜たちの一挙一動に意思を感じてしまう。思考や感情があるのかないのかわからないが、音楽やナレーションはおろか色彩さえもなくしてみせたこの映像を見続けるうちに、人を見るときと同じように豚や鶏や牛を見るようになるのではないか。それだけに、ラストシーンは(それは現実にはありふれたことのはずだけれど)ショッキングで、臭いをたどるように鼻を地面に擦り付けて低く唸る母豚の姿は悲痛に見えた。遠くに重機(?)のエンジン音と子豚たちの鳴き声がかすかに聞こえるたびに、音響の編集はかなり作意的に行っているのだろうと感じた。画面の外から聞こえる音が家畜たちと私たちの視界をつなげるのに大いに役割を果たしているように思う。