福福吉吉

潔白の福福吉吉のレビュー・感想・評価

潔白(2020年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
幼少期に父から虐待されていたアン・ジョンインは故郷を離れ、大都市で弁護士として活躍していた。しかし、ある日、父の葬儀場で農薬入りマッコリによる殺人事件が発生し、母のチェ・ファジャが容疑者になっていることを知り、故郷へ戻る。その事件に違和感を覚えたジョンインは母の弁護士として法廷に立つ。

◆感想◆
ストーリーのテンポは良く、序盤から人間関係の複雑さや田舎社会の怖さを丁寧に描いており、興味の欠かない内容でした。

アン・ジョンイン(シン・ヘソン)は冷静沈着で優秀な弁護士として描かれていますが、その反面の精神的な機微が表に現れず、幸福感が見えない人物でした。母が殺人事件の容疑者になったことを知って故郷へ戻ったこと自体は自然な行動なのですが、母や弟との間に一定の距離があってどこかよそよそしく感じました。ストーリーが進むにつれて、ジョンインと家族の間の距離がどう変化していくかが本作の見どころだと思います。

母のチェ・ファジャ(ペ・ジョンオク)は息子のジョンスのことを第一に考えており、また認知症が進行しているため、ジョンインを見ても誰か分からない状態になっており、精神的に不安定なキャラクターとして彼女の心情が見えてきませんでした。ジョンスが知的障害を有していることから心配するのは当然なのですが、彼女の言動の根拠の部分が何か分からず、ストーリー展開を読みにくくしていました。

本作では市長のチュ・イネと父のアン・テスが旧知の仲であり、その関係が事件に大きく関わってきます。設定自体はよく使われるものですが、田舎社会ならではの大きなものに巻かれる構造が顕著に出ていて、それがジョンインの行動を妨害していき、イライラする流れになっていました。

ストーリーが後半を迎えると、事件の裏の組織的な腐敗とそれを良しとする田舎社会の歪さが更に強くなりますが、それに対してジョンインが強く反撃するようになっていてストレスが解放されて気持ちが良かったです。また、事件の真実が見えてくると、ジョンインと母の本当の気持ちも分かってくるようになっていてとても良かったです。

なかなか面白かったと思います。

鑑賞日:2023年12月5日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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