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誰がキャプテン・アレックスを殺したかのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.5
【これぞWCU(ワカリウッド・シネマティック・ユニバース)】
新宿ピカデリーで開催中の「エクストリーム!アフリカン・ムービーフェスティバル」でウガンダ、ワカリウッド映画が上映されている。ワカリウッドユニバース2010年作品『誰がキャプテン・アレックスを殺したか』を観ました。

『クレイジー・ワールド』、『バッド・ブラック』と強烈なウガンダ、ワカリウッドの洗礼を受けた私であったが、なんと2010年からあの独自文法が確立されていたのだ。

開幕早々、天の声が饒舌に「コマンドー」と連呼しながら映画が始まる。この時点ではVFXや演出方法が荒削りな為、70分の作品ながら中弛みする場面もあるが、ドキュメンタリータッチでキャプテン・アレックスのインタビューに始まり、バーでの楽しい宴が突然瓦解して、大乱闘に発展する唐突な暴力。何よりも、技術不足を森や川、泥の水溜りでもみくちゃになりながら暴れる躍動感は、インディーズ映画にあぐらをかかない誠実さがある。

この誠実さは、サイレント映画時代。画の面白さを追い求めていた時代を彷彿とさせる。早回しで、飛んだり跳ねたりする滑稽さはバスター・キートン、ハロルド・ロイド、チャールズ・チャップリンといった喜劇王が追い求めた動きの魅力に匹敵すると言える。

また、本作では妙な伏線配置が魅力となっている。なんといってもABBA「マンマ・ミーア」の音楽が軽妙に流れてくる。その軽妙さは暴力によって分断され、大乱闘の末、やられてしまう人が現れる。その人に向かって、天の声が「マンマ・ミーア」と言う。しょうもないギャグではあるが、その予想もつかない、不意打ちに一本やられたと思う。

また、本作終盤では今後のシリーズ展開を宣伝する場面があるのだが、この時点で6年後の『バッド・ブラック』の宣伝がされているところに驚かされる。しかも、本作からブルース・Uが大活躍している。MCUが『アイアンマン』から壮大なユニバースを紡ごうとしている裏で、ワカリウッドもWCU(ワカリウッド・シネマティック・ユニバース)を紡いでいたのだ。
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