ブラックユーモアホフマン

ドント・ルック・アップのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
4.7
傑作!!!昨年中に観てたら確実にベスト10に入れてた。

“Don’t Look Up”。現実を直視するな、と。お前らみたいなバカな庶民はスマホやテレビの画面だけ見て嘘を信じ込んでいればいいんだ、上を見上げなくていいんだ、と。現実に政治家が思ってそうなことですねぇ。
そして同時に、人間全員の習性でもあるかもしれない。「とは言え誰かが何とかしてくれて、結局事なきを得るんだろう。だから心配しても無駄だろう」なんていう希望的観測。そりゃそう信じたいよね。でもそうしてる間に地球は滅亡にどんどん向かってますよ?という。

ちょっと前の問題を忘れちゃうのもそういうことかも。もう話題にもなってないし知らない間に解決したんだろう、とか無意識に思って忘れちゃいがちだけど、そんなことないよ?有耶無耶にされたまま何となく新しい話題で流されてるだけだよ?ってことに気づかない我々のような庶民。

アダム・マッケイは『バイス』を観てないから『マネー・ショート』ぶり。前2作は最近実際に起きた事実を基にした話だったから、政治経済弱者な僕には少しハードルが高かったのだけど、今回はこれから起こるかもしれない虚構を描く寓話だったから、ハードルが低い。ある意味、アダム・マッケイ史上最も間口の広い映画と言えるかもしれない。もちろん政治のこととかよく分かってる人の方がより楽しめるだろうけど。

うるさいシーンと静かなシーンをぶつ切りに交互に見せる編集が特徴的だった。まるで笑いの基本である「緊張と緩和」をそのまま表現しているような。

好きな役者がみんな好きな感じで出てて最高だった。ジョナ・ヒルよ!!やっぱ最高だぜお前。ディカプリオ!!ワンハリでも見せた情けない演技がやっぱ面白いな。そしてこの2人といえば『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。

だし、リーマンショックものの映画はその後『マネー・ショート』があって、『ウルフ〜』でブレイクしたマーゴット・ロビーが『マネー〜』にも出てる。少しずつ関係している……。

そういえば『マネー・ショート』の原作者は『マネー・ボール』の原作者でもあって、それにもジョナ・ヒルは出てたな……。

『ウルフ〜』はマーティン・スコセッシ監督だが、スコセッシの『アビエイター』で共演していたディカプリオとケイト・ブランシェットがまた共演している。

『マネー〜』や『バイス』に出演したクリスチャン・ベイルはデヴィッド・O・ラッセル監督の『アメリカン・ハッスル』(撮影監督が本作と同じくリヌス・サンドグレン)にも出てたけど、そこでジェニファー・ローレンスと共演している……。

ジェニファー・ローレンス、久しぶりに見たけどやっぱめっちゃ良かったなあ。ブレイクしたのが早いからまだまだこれからのフィルモグラフィが長くなるはずなんだよね。また色んな役で見たい。

役柄的には『オデッセイ』のドナルド・グローヴァーを想起した。若くてまだ地位も無い研究者がたまたま大発見をしてしまう、という。あちらもクリステン・ウィグやマッケンジー・デイヴィスの存在がコメディとしての格を上げていたような気がするけど、こういうの好きだなあ。そしてなかなかアメリカ映画じゃなきゃできないよなあ。

ヒメーシュ・パテル!!やっぱ好きだ!!『イエスタデイ』で知って以来。でも『TENET』に続いて出番少ない!悲しい!!もっと活躍して欲しいぜ。

このマーク・ライランスは怖い。歯が整ってんのも怖い。『シカゴ7裁判』といいNetflix映画よく出てるな。スピルバーグに見出されて以降、色んな映画でインパクトを残してる。有名監督に発見されて、いきなりアカデミー助演男優賞を受賞した俳優としてクリストフ・ヴァルツと同じ立ち位置だと思っていたけど、ヴァルツはその後あんまり活躍してないな。またあんなキレキレの演技が見たいんだけれども。

トランプのことも意識してるんじゃないかと思われる大統領役をメリル・ストリープがやってんのも最高。念願の女性大統領のはずなのに最悪www

いや、笑えない。草生えないコメディ。マジでこんなもんかもしれん。最後なんならスカッとしたもんね。人類こんなバカなら滅びちゃえと思ったよ。

めちゃくちゃ笑えるけど、その中に喜も怒も哀も詰まってる。現代を風刺したよくできた寓話。エンターテイメントとして一級品。アダム・マッケイやっぱすごい!感動した!!

しかし大勢が空を見上げる描写ってどうして問答無用に感動してしまうんだろう。これもスピルバーグ的な演出。

【一番好きなシーン】
沢山あるけど、ロン・パールマンの乗ったスペースシャトルが戻ってくるシーン。あれは現実にはあり得ない。コメディ映画だからできる見事なバカバカしさ。
その後、ロン・パールマンが彗星に向かって銃を乱射してるのも良かった。サイテーな奴だけどアイツもアイツなりに悔しさがある。