ぽんたぬき

ナイト・ウォッチャーのぽんたぬきのネタバレレビュー・内容・結末

ナイト・ウォッチャー(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

バードはいつから仕掛けていたか?

この映画は他の人も書いていたように、アスペルガーという病気についてどのように捉えるかで解釈が変わってくると思う。

アスペルガーはバードのように自閉症スペクトラムなどの対人障害はあるものの、高い学習能力があり、超人的な知能をもつ人も多い。(ちなみにイーロン・マスクもアスペルガー。)

この映画の中でもバードを雇う側のオーナーが「バードはとても知能が高い」というように表現しているので、バードもそういった知能の高いアスペルガーという設定である。

それを忘れてしまうと、美女の登場する、ポロリもあるよ的な胸キュン恋愛ドラマと解釈してしまう。

ただ、単純なミステリ仕立ての恋愛ドラマだとするとあまりにも仕掛けが多く、謎が多いのだ。
なぜバードは部屋番号を変えたのか、
なぜバードは夫人に「気をつけて」と声をかけたのか、なぜバードはメモリーカードを落としたのか、なぜバードは財布を落としたと誰でもわかる嘘をついたのか、なぜバードはアンドレにクーラー掃除をしたとあえて伝えたのか?

こういった事実を考えると、バードはかなり能動的に動いている人物ということがわかるし、先手を打っていることも分かる。
けして受動的ではないし、もちろんウブな人間ではないのだ。

それ故、バードはけっこう早くから、
アンドレが事件に関係していると分かって色々と仕掛けていたのではと思え、プールでのやりとりもお互いに手探りで騙しあっているように感じられる。

もう少し丁寧に冷静にみるともっと深く見えてくることがある。
同僚がいつもより早く仕事場に来たのも謎のひとつだ。

ただ、この映画の魅力はさまざまな解釈ができるように作っているところでもある。

そしてその結果、人は見たいようにしか物事を見ないということがわかることだろう。
それゆえに、対人障害をもつ若い男と美女という組み合わせに騙されて「甘酸っぱい恋愛映画」という典型的な解釈で思考停止になり、散らばっている謎も目につかなくなってしまう。
そして、それこそがこの映画の仕掛けなのだろう。
ぽんたぬき

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