Mercy

空白のMercyのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.3
全く会話をせず、家族がどういう人間か理解することを疎かにしている親子は少なくない。そんな父が突然娘を失った時、そこにある"空白"をどう埋めるのか。

物語の中に大きなストーリー展開は無く、現実と向き合えずに周りに怒りをぶつけ、関係者の人生を狂わせていく男の姿を、じっくりと時間をかけて濃密に描いている。

万引きなんてするはずがない。
虐められていたかもしれない。
そういえば、どんな娘か知らない。
ただただそこにある"空白"に怒りや憎しみを埋め尽くすことが彼にとっての精一杯の正義だったのだろうか。
そしてそれに対比するかのようにクサカベの自分勝手な正義もエスカレートしていき、2つの正義に板挟みにされて自責の念に溺れる青柳には感情移入せずにはいられない。

添田に気持ちの変化が起き始めた終盤では、娘がやっていた絵描きや読んでいた漫画を読み、娘という人間を知る事で娘との思い出の"空白"を埋めているかのように思えた。

不慮の事故により被害者遺族だけでなく加害者までもどん底に落ちる様を描くこの映画は、見ていて気分が悪くなるなぁ

最後に青柳と添田にとって救われる演出があったのは、俺にとっても救いだった。


【追記】
どうしても気になった点

・花音の化粧品を盗むシーンがちゃんと映されていなかった。
・花音が青柳に手を引かれ、控え室に入るまでは素直に着いて行ったのに、いきなり飛び出して逃げて行ったのはどうしてか。また、控え室での描写もない。
・青柳が添田に事故の時の説明をする際に、少し事実と異なることを言っていた。
・青柳の女の子に痴漢した噂についての真偽があやふやにされていた。

青柳を確定で白といえるような演出が無かったのは狙ってるとしか思えなかった。

ここの真相もあえて空白のままなんだな。
改めて凄い映画だ。。
Mercy

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