eri

空白のeriのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.2
この映画は映画の中では描かれてない『空白』の部分をどう解釈するかによってそれぞれの人物に対する印象がめちゃくちゃ変わってくると思う。

わたしはあの父親のもとに娘を残した母親も父親と同じくらい罪深いだろと思ったけど、そこにどんな理由があったのかもまた描かれてない『空白』の部分なわけで、ひたすらキモかった偽善色欲ババアがああいう歪んだ正義感と承認欲求を持ち合わせるようになった軌跡だって想像するしかないところ。
自動車の運転手だった女の子は謝罪が受け入れられたところで救われたのか?たとえ無視されなかったとしても苦しいのはきっと変わらなかったんじゃないのか。

実際に万引きがあったのか、店長はロリコンなのかも、わざと空白にしてある部分はどうとでも解釈できるわけで。青柳がただの自己肯定感の異常に低いだけの男なのなら、なんで寄り添ってあげるのが草加部みたいなやつしかいないんだとも思うし、充は妊婦の前でも平気で煙草吸うような救いようのない最低ジジイに見えるけど、それだけなら野木くんにあそこまで慕われないのかもとも思う。

理不尽に責めることしかできずにいる人の心を動かすのは、理不尽な事象に対して責める対象があるのに責めることをしない人なんだろうな。これでもかこれでもか!って最悪の出来事が続くのがすごくしんどくて、人が保身のために嘘ついたり隠し事したりして卑しいないやだなってところをリアルに見せられる反面、最後まで見続けることで優しい尊い部分もいやらしくなく想像させてくれるところには救いを感じた。結局人を追い詰めるのも救うのも人で、本当の意味で自分を救えるのは自分しかいないんだろう。脳天にズシンとくる傑作!しばらく引き摺るわ〜
eri

eri