歩く肉

海を待ちながらの歩く肉のレビュー・感想・評価

海を待ちながら(2012年製作の映画)
3.8
半世紀で海の殆どが干上がって砂漠化したアラル海。以前ウズベキスタンの若い女性とアラル海について話す機会があり、その人はいまのアラル海をある種の映えスポットとして語っていて、毎年その砂漠エリアで音楽祭が開催されるとのことで、いつか行ってみたいんだと言っていて、とても驚いた。もちろんそれは単なるひと個人の意見でしかないけれど、個人的にこれほど、行きすぎた産業活動によってもたらせた自然破壊という負の遺跡もない、と思っていたから、それがポジティブに語られていることになんとも言えない気持ちになった。乙嫁語りの中のあの生き生きとした双子が住んでいた場所とはとても思えないいまの風景を見てそう感じた。
本作はそんな、なくなった海を取り戻そうとする男の話で、フドイナザーロフの遺作でもある。軸の話はあるけれど、それを取り巻く話が少し散漫な印象を受ける。あと、テンポの良さを意識してるからか、なかなか拗れた人間関係がある割にそれをわかってるでしょっていう前提でどんどん話を先に進めるのは少し雑さを感じざるを得ない。
しかし、失われたものに対して思いを馳せる人間がいるのだということを感じることができて、なんだか少しだけ救われた。
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