めっちー

VIDEOPHOBIAのめっちーのレビュー・感想・評価

VIDEOPHOBIA(2019年製作の映画)
3.5
わかりづらい映画だった。
わかりづらいというのは、場面に応じて主人公のキャラクターが何度も変わるからなんだけど。
この人、ある時は"神奈川に住んでいたから東京の事はよく知らない"と言いながら、またある時は"六本木のスタバで働いていた"と言う。ライチャ越しに見ず知らずの異性に自慰を見せるのは構わないけれど、デジタルタトゥーを刻まれるのは自分を辞めたくなるほどイヤ。身を寄せている家族の前では「ただいま」を言うことすらどことなくぎこちないのに、家で恋人と過ごすパートでは帰りにアイスを買ってきてくれなかった事に対して「おこ。」とか言っちゃう。かわいい。
その時々で異なる表情を見せるのは誰にだってある事だし、内面では地続きなのかもしれないけれど、客観的にそれを見ている我々はどれが本当なのか知る術をもたない。終には自分自身であることすらも放棄されてしまうから、これまで見てきたアイという人物が本来の姿だったのかさえ判らなくなってしまう。主人公自身も倒錯しているのかもしれない。
『ファイアパンチ』って漫画の、何者でもなくなったとしても"なりたい"と強く望めば「人はなりたい自分になってしまう」という台詞がすごく好きなんだけど、それって解釈を変えればどれだけ環境を変えても自分自身であることからは逃れることができないという呪いにもなる訳で、「ずっと見ているよ」という言葉や暗がりから現れた手に突然肩を掴まれるシーンはそれを示唆しているのかとも思った。
いまの自分を辞めたくなるほどイヤになった事は今のところないけれど、悪い意味で世界を捉える事はいつでも自由にできてしまう。都合の悪い過去をなかった事にしたとしても、自分で判断した事の責任は自分で背負っていかなくてはならない。
言葉にすると至極当然の事ではあるけれど、受けとめがたい現実に直面した時に果たしてそこから逃げずにいられるだろうか。
怖。がんばろ。
めっちー

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