とうがらし

写真の女のとうがらしのレビュー・感想・評価

写真の女(2020年製作の映画)
3.3
写真屋を営む男は、依頼されるがままに、写真を撮ったり、修正したりして淡々とした日々を過ごしている。
そんなある日、休みの趣味に森で昆虫写真を撮っていたら、木に引っかかるスパッツ姿の若い女(Cocco似)に出会った。
その女は、インスタ映えに夢中なインスタグラマーだった…。
彼女の鎖骨付近には、大きな傷があり、なかなか治らない。

自分から見た自分と、他者から見た自分についての物語。
25冠受賞という、うたい文句はむしろマイナス。
有象無象。ほとんどがマイナーな国際映画祭なのであまり参考にならない。
でも、国際舞台である程度善戦したのはうなづける内容。

主人公の男は、最後のシーン以外一切セリフはない。
全ての音は、後で録り直すアフレコ。
同録が当たり前の時代に、人も予算も少ないインディーズで、全編をあえてアフレコにするには相当の作業が必要だったと思う。
カメラワークも編集もかなりのこだわり。
例えば、冒頭のガラス拭きで、視覚的に状況を説明する。
なかなか憎い演出。
その努力が実り、新藤兼人監督とも、ジャック・タチ監督とも違う独特の世界観を作り上げる。
終盤はブラック・スワンばりに狂気の世界へ。
ストーリーとして個人的に面白いかは別だが、金子由里奈監督の「眠る虫」以来の哲学的な意欲作。
惜しむらくはタイトルをエンドロールの直前に持ってきてほしかった。
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