はしもと

君が世界のはじまりのはしもとのレビュー・感想・評価

君が世界のはじまり(2020年製作の映画)
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2020.8.1
松本穂香と金子大地が出るからと興味を持っていたこの映画だが、実際はその二人が主人公なわけでもなく、その二人の強烈な絡みがあるわけでもなく。しかしめちゃくちゃに胸の中を掻きまわされ、無性に泣かされてしまった。

私の高校生活はこの映画で見るような熱のあるものじゃなかったななんて思いつつ、それでも自分勝手に振る舞うのも誰かに思いを馳せるのも、誰もが経験していることなのだ。自分の中の何かがおかしくなってしまいそうな感覚を、私たちは知っている。

触れれば壊れてしまいそう、なんて手垢つきまくりの表現をここで使ってしまいたくない。青春や思春期を簡単な言葉で一括りにしたくない。

水はけの悪い校庭にできた大きな水たまりの真ん中で、青い空と白い雲を割って泥でぐちゃぐちゃになりながら泣き笑いしている様を、だいじに思わずにいられるか。彼、彼女らの全員がいとおしい。そして過去の私自身のこともいとおしくなった。

また私はこれまで特にブルーハーツを聞いてこない人生を送ってきたし、作中で流れ演奏される『人にやさしく』に対しても「やっぱりブルーハーツってそういう位置なんよね」となんとなくわかった風の感想しかなかった。彼らの曲に心打たれる人が大勢いるという知識だけはあったから。しかしエンドロールで松本穂香が静かに歌う『人にやさしく』で大泣きした。こういうことかと思った。

「my name is yours」にひそむ感情を愛と呼び、誰かは私の、私は誰かの、世界のはじまりになる可能性に喜びも絶望も感じよう。