地味で淡々としてて、初めはなかなか入り込めなかったけど、この哲学的で独特な世界観にいつの間にか引き込まれてた。
移民やLGBTQをテーマに入れ込むのは正直もうウンザリするほどNetflixオリジナル作品らしく、どうせまた形だけのものだろうと初めは引き目で観ていたものの、今作は一味違っていた。"勤勉な東アジア人"というステレオタイプを上手く使ったシナリオは見事で、主人公がマイノリティーである意味が明確に存在するから良い。
無愛想で無関心だけど、胸の内に秘める想いは大きいエリー。エリーの紡ぐ言葉は文学的で美しく、口に出して言えないことも他の誰かに成り代わってなら言えるというのが切ない。そんなエリーと、単純で意気地無しなポールとの凸凹コンビは最高に微笑ましい。
キラキラしたアメリカの青春映画とは違って、色彩は落ち着いていて丁寧かつ繊細。それでもコミカルな会話劇にはセンスが感じられたし、新たな青春映画の形を見させてもらった気分。
印象的なモチーフがたくさん登場するのも面白かった。タコスソーセージ、餃子、ヤクルト、ラグビー、卓球、自転車… などなど挙げたらキリがない。単調で抽象的なものを美とする映画にこそ、形のある愉しさが必要なんだよね。
