Nobu

アントキノイノチのNobuのネタバレレビュー・内容・結末

アントキノイノチ(2011年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます


【あなたの “命” は重いですか?】

26本目(映画100本観るぞ企画)は
岡田将生さん・榮倉奈々さん主演の
日本映画『アントキノイノチ』(2011年)

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岡田将生さん演じる 杏平は
軽いどもりがあったため 高校時代いじめの対象に

それをかばってくれた親友に いじめの対象が移るが
その親友を守るために何もしてやることができず
親友は自殺

親友を自殺に追い込んだ松井という同級生に
殺意を抱く杏平だが
登山中に崖から足を踏み外した松井を
恭平は結局 助けることに

それがきっかけとなり
文化祭の日に事件を起こして
杏平は高校を中退
躁鬱病で精神科にかかるようになる

榮倉奈々さん演じる ゆきは
高校時代に同級生からレイプされ妊娠
そのことを自分の親からもなじられた ゆきは
結果的に流産してしまい
極度の男性恐怖症となる

流産させてしまった子供の命のことを
ずっと引きずりながら
何度も死のうとしながら
それでも生きている

そんな二人が
遺品整理という仕事をする会社で出逢う

荷物の片づけではなく
遺族が心に区切りをつけるのを手伝う仕事

遺品を “ご不要” と “ご供養” に分けていく
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杏平の心を病みに追い込んだのは
いじめの直接的加害者・松木ではなく
それを見ても見ぬふりしている
その他大勢(生徒も教師も)の存在だった

『心の奥では
 グルグルと邪悪なものが渦巻いているのに
 人前だと
 穏やかな空の下にいるように見せかける
 それを誰もが了解していた』

いじめの本質が “そこ” にある

“傍観” という共犯者たちの得意技

正義感をあざ笑うかのような空気

同調・同質だけが 唯一の “シェルター” であり
共通の “生け贄” を必要とする学校生活

ネットという新しい玩具を得た彼らは
匿名性のチカラを借りて
さらに凶暴性を増していく

表面は 優等生や人気者の仮面を被りながら…

“命の重さ” が極限まで軽くなる時代

それとは対照的に 遺品整理の仕事が
その人の “生” を その人の “命の重さ” を
浮き彫りにする

『遺された遺品たちは色んなことを語りかける
 テレビは
 亡くなった人の話し相手だったのかもしれない
 暖かな色のランプは
 落ち込んでいた人を
 明るく照らして元気づけたのかも
 使い込まれたナベは
 毎日の食事を食べやすく煮てくれた

 人間は死ぬ時はひとりだ
 死はひとりで迎えるしかないのだけれど
 生きるには誰かと繋がっていたい』

流産した ゆき の赤ちゃんが
ゆき に “生” を繋いでくれた

ゆき のひたむきな生き方が
杏平に “生” を繋いでくれた

誰かの “生” も 誰かの “死” も
全て他の誰かの “生” に繋がっていく

今の 僕の “生” も きっと
沢山の人の “生” と “死” が繋いでくれたもの

だから “生” を全うする
誰かの “生” にバトンを渡し続けながら…

~【映画026】アントキノイノチ~

https://www.facebook.com/nobuyuki.suzuki.estrellita
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