まいたけ

哀愁しんでれらのまいたけのレビュー・感想・評価

哀愁しんでれら(2021年製作の映画)
3.9
「現実」と「おとぎ話」の匙加減が絶妙で、ものすごく気持ち悪い映画だった。もちろん褒め言葉として。ストーリーの隙のない作りと俳優の振り切っているのに自然な演技に、少しも飽きることなく最後まで観た。

後味は最悪なのに終盤は主人公たちの行動にちょっと納得してしまっている自分がいて、あれ?おかしいぞ?と。

「ほかに何かできることはないかな」

そう呟きながら右往左往する小春と大悟が、ただただ我が子の幸せを願ってやまない親に見えたり、恐ろしいモンスターに見えたりする。

サイコパスと言ってしまえばそれまでだが、彼らの感情や言動を切り取っていくと「普通の人」というか、分からなくはない、という気持ちにさせられる。いきなり振り切れる訳ではないところが妙にリアルだ。劇中至るところに散りばめられた違和感の種を拾っていくと、ラストシーンに向けてそのすべてが芽吹いて蔓が絡まっていくような感覚だった。

ネタバレ抜きに語るのがなかなか難しい作品……。胸糞悪い映画が苦手でなければスクリーンでこの気持ち悪さを体験してほしい。
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