めぐみ

ヤクザと家族 The Familyのめぐみのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.0
おそらく一年ぶりに仕事終わりに映画館へ行こうと思った。疲れていたから、心温まるハートフル作品が観たい。そんな時に「家族」の文字が目に飛び込んだ。ヤクザという不穏な言葉と対照的な暖かい印象。
ポスターもかなり不穏だ。暗い背景に人物たちが佇んで、そっとこちらを伺っている。唯一舘ひろしを視認した。多分他の俳優陣は、まだ無名か、EXILE系統の事務所の人かな、と思った。

全部間違ってました。

全体的に有名どころが出てきてびっくりした。ただ綾野剛、若者時代だけは綾野剛だと気づけなかった。北村有起哉氏がめちゃくちゃめちゃくちゃ好きで、あんな役回りで堪らなかった。アニキ主演でもう一本撮ってほしい。

女性の描き方について、もやもやと帰路考えていたことが少しまとまってきた気がする。
まず、その道の文化を知らないし、フィクションとしてもヤクザ映画を見慣れていないので、様式美を知らないのかもしれない。ヤクザ映画あるあるがあるのかもしれない。
ヤクザに付随する女性像って、極道の妻みたいなめちゃんこ強いオンナみたいなのを想像する(観たことはない)。もしくは長ランさらし特攻服のレディースか。いずれにせよ腕っ節も自我も強い女性像。
でも本作の二人の女は、運命に翻弄される大河ドラマの主人公の妻みたいな、弱く儚い存在として描かれていた。
ヤクザは男社会の最たるものだろうから、家父長制云々いうのはおかしいかもしれないけど。というか、だからこそ、昔ながらの三歩下がって後ろをついていく女性像になるのかな。本来の意味での「家族」を女が担わされすぎているような気がしてしまったんだろうと思う。家族というか家庭か。愛子さんも由香も「家庭」を守っているんだろうな。
アットホームな映画を求める精神状態だったからこういう感想になってしまったけど、製作者に思いを馳せてみると、この女たちは堅気の世界との繋がりを意味しているのかな、と思った。手を離せば断絶する、唯一の接地面。

山本はどちらにもなれなかったのかなあ。
あのラストシーン、遺された者たちの光と陰。

(呼び出されていきなりひん剥かれて惚れちまうなんてのはフィクションでしかないと思うし、その後あんな展開になるのも女をなんだと思ってるんだって私の中のフェミが言うんだけどそれこそフィクションなんだと思うことにした)

反動で今『空飛ぶ広報室』観てる。
奥手な綾野剛のほうがすき。
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