まさにタイトル通りのヤクザと家族の物語だった。
いまどきヤクザ？と思う人もいるかもしれないが、個人的にはヤクザというテーマは今の時代にこそ語られるべき存在だと思う。
ヤクザという存在は元々、うまく社会に溶け込めないはぐれ者の受け皿であり、弱者の連帯、ある種のコミュニティーです。
昔は地域コミュニティーが存在したからヤクザもある意味で社会の一部として機能して共存できていたものが、現代社会では地域コミュニティーが消滅してしまいヤクザは完全に孤立して、人々からは理解不能なものになってしまった。つまりヤクザは現代の日本に残る数少ない本物のコミュニティーだということ。仲間の仇を討つためだけに14年も刑務所に入る。親父（組長）を守るためには命も惜しまない。損得で考えればまったく合理性に欠くように思えるが、主人公にはそんなものは関係ない。なぜなら家族だから。助けたいから助ける。守りたいから守る。損得ではなくそうしたいからそうするという内発性で行動するわけです。損得と合理性ばかりで動く現代日本社会とその人々、作中ではユカが勤める役所がその典型として描かれています。そのあたりの監督の切れ味はすごい。「あなたに命を懸けても守りたい存在はいますか？」そう問われているような気がしました。
