たぽ

青春の殺人者のたぽのレビュー・感想・評価

青春の殺人者(1976年製作の映画)
4.5
ATG映画をちゃんと観たのは初めてだった。いきなり凄いものを観た。

76年、つまり「タクシー・ドライバー」と同年の公開。そういえばこのやり場のないルサンチマンはどこか通じるものがある気がする。ただトラヴィスが権力者やポン引きといった自分とは異質なものに対して憎悪にも似たエネルギーを外的に爆発させたのに対して、順のそれは家族という身近なものに向かった。誰もが抱える、誰よりも距離が近くて、でも誰よりも分かり合えない他者。血の繋がりというのは濃い故に時に憎しみにもなる。でも殺すほどか?という些細なことにも見える…なんというか、他者とのコミュニケーションの不全がこの映画の芯のひとつにあるんじゃないかとか思った。この思春期から青年期あたりって感じの出口のない葛藤とか心の機微の描きかた、そのリアルさ。40年以上前の映画とは思えないのは、内面世界の描写の鋭さゆえかも。だから順にどこか感情移入しちゃうのかな。

順が父を殺してからの母との時間は、殺人という非日常な緊張感と、家庭の茶の間での母と息子の会話という日常的な穏やかさやコミカルさが同居していて、スクリーンから目を離せなかった。そして母を演じる市原悦子の迫力たるや。母の顔と女の顔が交互に見え隠れするその様はまさに怪演というほかない。絶命のシーン、「痛くしないでぇ…」「痛い!!」のくだりは、母の処女を息子が奪うよう。ホントに血の滴る音がにおいがしてきそうで怖かった。
背徳の極みのようなシーンのあとに流れるあっけらかんとした爽やかさと、その隙間に顔を出す虚無感や無力感がリアルだった。浜辺の回想シーンや、検問で門前払いを食らうところ、スナック炎上など印象的な場面はたくさん。
あと原田美枝子がかわいいし、あの小悪魔感がとてもよい。きれいな身体に見とれてしまいました。おっぱい…

水谷豊がこんなにかっこいいとは知りませんでした。また絶対に観る!端的に言ってすばらしかった。
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