セクシュアルマイノリティをテーマとしておらず、ごくふつうの誰もが経験する初恋の喜びと痛みを描いた作品。
対比の関係が印象的だった。大人と子ども、執着と自由、生と死、身近な人の死を経験した人と知らない人、、他にも要素があったかもしれない。
エジプトの死生観に魅了されるアレックスと、実際に父を亡くしたダヴィドとの言語化できないけどたしかにある妙なズレが、結末を予感させて切なかった。
また、白黒つけられないもやもやっとした矛盾した感情に戸惑う姿が印象的だった。
愛しているけど他の人も好き、それを理解できる人とできない人。自分の子どもが同性愛者だとどこかで分かっていながらも認められない大人。姿を見ていないから死を認められない人...言語化できない感情を、言語化していくことで整理しようと取り組む姿がとても眩しかった。
思えば(回想シーンでは)アレックス以外はみんな影があるようだった。誰もがなんらかの痛みを経験していて、その痛みが表情に出ていたと思う。
大人になる過程で誰もが忘れられないような痛みを経験していて、アレックスにとっての初めての痛みを見せられた感じがした。