Echoes

スパイの妻のEchoesのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
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商社経営者の妻聡子は豊かな暮らしを享受しながらも夫が何を考えているか腹の底を全く読めていない。
ノモンハン事件後の満州から帰ってきた夫が何かを隠していることを悟った聡子は、夫を詮索するも彼は何も打ち明けない。聡子は夫が何者なのかを確かめようと初めて自分の意思で行動する。
大戦直前のきな臭い熱気に包まれる中、このあたりの心のさぐり合いは先が読めず面白い。
自分はこの映画を観ながらキューブリックの遺作「アイズ・ワイド・シャット」を思い出した。
パートナーの過去に疑いを持ち秘密を詮索していくのだが片方が上手で、最後は分かり合うことを諦める。夫婦間の秘密に目を瞑って暮らしていれば表面的には幸せなんだと。

印象に残ったのは聡子が連行された後に、過去に自分たちに親切にしてくれた泰治にすがるも突き放されるシーン。
人がもともと持つ優しさだとか自然な人間性に基づく行動は、当時の枠組みの中では許されなかった。
劇中にも「この時代では狂っていない方が狂っている」といった台詞があったが、自分がもしこの時代に生きていたら人間性と正気を保っていられたのだろうか。そんな怖さを感じさせられた。
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