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ウィリーズ・ワンダーランドのFMLのレビュー・感想・評価

5.0
ニコラスケイジがひたすら喋らない、史上初無言ホラーアクションムービー

無言で掃除し、無言で悪霊を退治し、そしてたまに無言でピンボールをする。
この映画を観る際に必要な知識はひとつだけ
"想像以上にニコラスケイジがしゃべらない"
どれだけしゃべらないかというと、ひとこともしゃべらない。
ただ、発せられるのは悪霊を殴る時に出る吐息のみである。

世界一ゲームが下手なやつが世界一のクソゲーをプレイしてるのをただただ見せられてるかのような壮絶な時間を約90分体験することにはなるが、世界一クソということは世界で1番価値があるということでもある
可もなく不可もない中途半端なファミリー向け映画のメタファーがこの作品に出てくるファンシーな悪霊たちだと考えると、ただ黙々とそれらを殴り殺すさまは爽快なエンターテイメントにすら思えてくるから不思議だ

そう、各々で悪霊を何か自分の嫌いなものに投影して鑑賞するのも楽しみのひとつかもしれない
某国民的アニメクレヨンしんちゃんに出てくる某キャラクターネネちゃんがウサギの人形を殴りつけるように、ストレスやフラストレーションをひたすらそこに叩きつける
あまり健全とはいえないが、ひとりでためこんだり抱えこんだりして沈むよりはそういった解放も必要なんじゃないか

まぁなんだかんだ理由をつけてこの映画を語ってるが、要するに一言でまとめるとニコラスケイジが無言で悪霊を殴る映画というだけのことで、そして、そんな内容の無さすらもおもしろく感じさせる魅力が、ニコラスケイジにはあるということである。

ただ、逆にニコラスケイジ以外のキャラの影の薄さ
彼ら(この手の映画ではお決まりのアホのチンピラども)が喋るおかげで、賑やかさが加えられるものの、とはいえこの映画の舞台は一応遊園地的な施設なわけで、悪霊のファンシーなルックスと機械から流れる楽しげな音楽だけでもなんとか90分持ちこたえるほどの華やかさはある

それならいっそ、本当に一切セリフなしで最後まで乗り切っても良かったんじゃないか、と思ってしまうがそれだとさすがにストーリーの構築が難しすぎるか...

ストーリーなんて"あってないようなもの"と"本当にない"は近いようですごく遠いよな、っていう気づきを与えてくれたという点ではある意味貴重な映画体験になったような気がする
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