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アッサのSのレビュー・感想・評価

アッサ(1987年製作の映画)
4.0
 『LETO』が日本公開されるということで、予習的な意味もこめて鑑賞。タイトルになっているASSAは、この時期のソ連の新しい芸術家たちがふざけて出す喊声の音を指している。本作は、ソ連が変革を迎えていく時代にあって、その変化を声高に賛美しているのである。Хочу перемен!(「変化よ来れ!」)

 大筋となる三角関係恋愛ドラマは平凡で間延びしている感は否めないけど、その間延びの主因となっているサブプロットや様々なモチーフの挿入こそが本作の主役なのでいかなる問題もない。その中心の座を占めているのは当然ながらロックバンド、キノーであり、ヴィクトル・ツォイであるというのは間違いないだろう。
 ただしおさえておかなければいけないのは、主人公バナナンを演じたセルゲイ・“アフリカ”・ブガーエフである。彼もまた、単なる人気俳優にとどまらず、ソ連の新しい時代の波に乗ったアーティストであるからだ。あまり知られていないが、彼は1999年の第48回ヴェネチア・ビエンナーレにも出展している。バナナンの見る夢の映像は、おそらくアフリカ自身が描いたのではないだろうか。
 前面に押し出されているのはロック、しかし音楽以外にも本作にはそのような新しい波を感じることができる。画面に「註を見よ」とテロップが表示され、まとめて解説されるスラングにも、旧来の時代を転覆させんとする若者文化の一端が現れている。
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