aynly

ノマドランドのaynlyのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.5
“I’ll see down the road”

長編2本目にしてアカデミー賞にノミネートされたクロエ・ジャオ監督。前作「ザ・ライダー」もロデオが生き甲斐の青年の物語で、見逃してはならないほどの秀作だ。そして今回はノマドの物語とまた「アメリカ」的。彼女に映るアメリカが人々の心を掴むのはなぜなのか。

「私は思い出の中に生きる」気さくで基本誰とでも仲良くなれるファーン。でも一人になった時の彼女から感じられる孤独感はまるでコインの表裏。彼女に何があったんだろう。それは最後まで語られない。

確かなことは誰もが持っている「あの頃に戻れたら」な時をファーンも持っている。まだ思い出の中で生きていきたい。忘れたくない。人はこれを執着とか、後悔とかネガティヴな言葉を並べそう。でもそんな思い出があることはとても幸せじゃないだろうか。

テンポラリーの仕事をこなし、移動しながら「久しぶり!」と古い仲間との再会。助け合うこと、声を掛け合うこと、繋がりを持つことの大切さはコロナ禍になってからたくさんの人々が身に染みただろう。

定住することを選ぶ人、目的地を目指す人、人生は人それぞれのかたちがあっていいんだと肯定してくれた。

孤独で押し潰されそうになった時こそ、人の温かさを感じることが出来た時、生きる希望が湧き上がる。それを今感じないでいつ感じられるだろう!その事に気づけた時、本当の敵はウィルスではないことがわかるかも。

ファーンがどういう道を歩くのか気になりつつ、美しいアメリカの大地と重なった映像を見た時そこには「希望」がある気がした。そして、これこそアメリカだと感じた。
aynly

aynly