co

ノマドランドのcoのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
5.0
時には子供に先生と呼ばれ、フルートを吹き、可愛いお皿を大切にし、人との約束を守り、他人の家で座った椅子を元の位置に戻し、平常心で現実に向き合う。
ファーンは愛されて育ち最低限以上の文化的教育も受けている。
そのような描写により、この映画を観るであろう私たちへ誰でも家も職も失う可能性があるということを言いたいわけではいし、そのノマドを「下」の人間として描いているわけではない。
社会人になって、結局は誰も救ってはくれないと気づいたことによく似ていた。
親切で社会的に優位な人の助けるよ、という言葉に甘えることはできる。助けられることもできる。
それに、同じ境遇の人と話し合い、聞き合って、協力し合って生きることもできる。
それでも誰も救ってはくれないのだ。
たった1人愛した人、住んでいた家から見える景色。それは美しい過去。失ったもの。その過去をやり直し後悔を正すことでしか決して人間は救われない。
もちろん不可能なんだけど。
昔見た美しいツバメの群れを目指し死んだ女は正しかったのだ。彼女はもう一度その景色を見ただろうか。
岩場のツアーを抜け出したり、誰もいない川で裸で浮かんだり、雨の海辺を濡れることも構わず歩いたり、ツバメを見て感動したり、することは無意味だが、そのような人間の瞬間への賛歌であった。
co

co