まぁや

コール・ミーのまぁやのレビュー・感想・評価

コール・ミー(2009年製作の映画)
3.7
車で旅をしながら、各地で朗読会を開催し、ささやかな営業活動をしている小説家デイビーと、弟のショーン。兄は内向的だけど、弟は真逆の弾けた奴。ある夜、モーテルで休息するデイビーに、見ず知らずの女から電話がかかってくる。。

鑑賞後、軽く脱力感に襲われた。音声というひとつの感覚器官だけを頼りに、男と女が妄想の世界を作り上げていく。ニコールは大胆さや、セクシーなのに、お色気だけじゃなく、豊穣な包容力も持っていて、彼は次第に彼女の虜となり溺れていってしまう。

デイビーの振る舞いをみていて、最近よく言われるHSPなのかなと感じた。一般人より感受性が鋭くて、コミュニケーションに支障が生じてしまう。(わたしもHSPかも)音楽が鳴り出せば、踊ってしまうような欧米カルチャーのただ中で、彼のようなタイプはさぞかし生きづらいだろう。だからこそイマジネーションの世界が豊かで、小説を執筆できるのだと思うけれど。

彼のニコールとのやり取りは、まさに小説の世界観である。想像の世界に潜り込み、丹念に唯一無二の彼だけの女神を産み出す。
そんな虚像に、現実の女が勝てるわけがない。。

ラスト。予想だにしていなかった現実をぶつけられて、、わたしもデイビー同様、頭が混乱した。
そうきたか。。なんでもありだな。というのが、まず初めの感想。

ニコールはとんでもな存在だったけれど、ぎこちなく、ぎこちなく会話を進めていくと、ニコールの優しい片鱗がそこはかとなく漂ってくる。あの会話のシーンは作品の肝。繊細で切なくて、痛くて。越えられない壁への絶望。だけど、ラストのデイビーは悲哀と共に、憑き物が落ちたような表情をしていた。

生身のお付き合いって、こころをえぐられることもあるし、価値観が合わなくて、もどかしく苦しい時もある。押したり引いたり、たくさん会話してお互い理解を深めて折り合いつけたり、そりゃ大変。
だけど、お互いにこころの声をちゃんと表現して向き合えば、唯一無二の関係を築けたりもする。

だから、デイビーも一歩踏み出してみてほしい。今度こそサマンサに向き合えるかな。。
まぁや

まぁや