おかだ

ザ・ファブル 殺さない殺し屋のおかだのレビュー・感想・評価

4.2
出来るんやったら前もこのぐらいやらんかい


用事で大阪に帰省して、帰省したのにすることは一人で映画館へ行って新作を観てアプリにレビューを書くという。

そんな無間地獄の中で鑑賞してきました「ザファブル」の続編。

早速ですが、前作で感じた不満をほぼ改善しながら強みのアクションシーンを強化させて帰ってきた完全なる上位互換作品で、大いに楽しむことができました。


あらすじは、岡田准一演じる伝説の殺し屋ファブルが殺し屋稼業を休止し、相棒(?)である木村文乃と兄妹という設定で普通の暮らしを送るべく奮闘するが、過去の因縁に巻き込まれてしまう。
というもの。

で、正直あらすじというかストーリーテリングは今作でも下手くそなので特に話さないのですが。


まずは前作で感じた特に大きな不満を3つ。

1点目は、アクションパート以外のドラマやユーモアの冗長さ。
佐藤二郎がいる時点で嫌な予感はしていたが、間延びしている上に質も悪くテンポを著しく損なう不愉快な要素でした。

2点目は、木村文乃演じるパートナーの描写不足。
ファブルとの関係性が分からないどころか、バディとしての役を振られているにも関わらず何も仕事をしないというとんでもない贅肉キャラでした。

そして最後に、アクションパートのレパートリーの少なさ。
たしかに岡田准一の身のこなしはすごい。半端じゃない。
けれどそれを映す工夫がまるでない。
映画であって格闘技の教本ではないのに、同じ構図で同じような敵を倒している様子を考えなくダラダラと繋ぐだけ。

上記3点って、総括するといずれも不要ってことなんよね。
無くてもいいはずの要素によって100分弱が積み上げられてしまうストレス。

で、対して今作ではどうしたかというと、それらを全て削ぎ落としていたというわけです。
なので冒頭に改善したと言ったんですけど、もう少し正確に伝えると、無駄を省いたと。
その分を今作の目玉であるアクションのバリエーションで埋めるという至極真っ当なアプローチ。

それによって前作の肉ダルマ映画から全く新しい娯楽アクション大作に生まれ変わらせることに成功しておりました。


例えば1点目に関しては、新登場の堤真一や平手友梨奈周りの描写をそれなりに詰め込むことで、つまらないギャグや余談による間延びを防いでいた。
これに関しては多分狙っていなくて、むしろ堤・平手にもたれかかりすぎているぐらいでしたが、結果として上手くいっていたと思う。

2点目に関しては、ようやくバディとしての役割を持たされた木村文乃のアクションシーンがカッコよくて、個人的な満足度が非常に高い。
ただ、バディであるからにはファブルとの差別化が必要な筈だがそれは出来ておらず、敵の殺し屋鈴木にも彼女は殺し屋ではないと指摘されていながら、じゃあ実際は何の役割なのかということが示されなかったところが残念で、正直根本的な問題解消には至っていない。

そして3点目、アクションのレパートリー。
これがとにかく凄かった。
映画におけるアクション、活劇の基本はやはり大きなスクリーンを活かした上下動、落下運動だと思うのだが、これを積極的に取り入れたアクション構成がめちゃくちゃに楽しかった。
そもそも冒頭の立体駐車場シーケンスから、もしかして今回かなり良いんじゃないかと思ったがその通り。

やはり終盤の団地での一幕は今作の白眉。
洋邦通しても、近年でここまでのものってあまり観ていない気がする。
落ちて上って駆けてまた落ちるの乱れ打ち。
足場に命綱付けて、アメリカの特殊部隊みたいにどんどん降りてくる敵軍には笑かされたし。


あとはそう、細かいところでいくと、終盤に平手友梨奈が堤真一に復讐の銃口を向ける場面。
ああいうシーンって割と良くあるというか、有名なのは「セブン」とかだと思うんですけど、引き金引くか引かないかサスペンスみたいな。

あれってだいたい、復讐は何も産まないみたいなその、銃を持った人間の心理的な葛藤からサスペンスを生み出すのがセオリーなのだが、今作では地雷を踏んでいるために、撃つと反動で地雷が作動するというまさかの物理的サスペンス。
ちょっと珍しいなあと思った次第です。


正直、その後のエピローグのもたつき方とか、やはりドラマの転がし方が下手すぎるとか、敵の殺し屋が活躍しなさすぎるといったキャラの捌き方の下手くそさとか、まだまだ気になる点はありつつも、そんなことがもう気にならないぐらいに、めちゃくちゃよく出来た近年稀に見る娯楽大作だったと思います。

間違いなくおすすめです。
おかだ

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