ノリオ

落語娘のノリオのレビュー・感想・評価

落語娘(2008年製作の映画)
2.9
ミムラは妙に色っぽくなく、噺家らしい佇まいを身につけていたと思う。
落語会に身を置く女性とはあんな感じなんだろうな、と妙に納得してしまった。


落語家は物語のすべてを自らで演じ演出するわけで、映画の中で彼らの“噺”を表現するのは難しい。

落語というのはそれだけで完結するわけで、わざわざ映画の中でしたところで結局“本物”と比較してしまう。

津川雅彦は破天荒な落語家、平佐をそつなく演じていたと思う。
だが落語をするというのは演じる上に演じるということになるわけで、妙に芝居くささが残っているのがなんとも残念である。

「緋扇長屋」を演じる上で中原俊が選んだ手法は、落語の可視化である。
噺家の演技だけで観客に物語を想起させる落語とは真逆の手法なのだが、見る手にある程度想像力を喚起させるバッファがなく、結果的に噺自体を妙にチープにしてしまった感じは否めない。

その噺に取り憑かれたら最後、挑んだ噺家たちはすべて高座で死んでしまうという“恐さ”がまったく伝わらない。
その噺に挑まなければならないという津川雅彦の決死の覚悟みたいなものもやはり伝わらない。結果的にその「緋扇長屋」に挑むという行為を空々しく感じてしまうのである。
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