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相撲道~サムライを継ぐ者たち~のlmlのレビュー・感想・評価

3.8
追記:竜電を許すことはできない
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冒頭の満員の国技館のシーンだけでも映画館に見に行く価値ありです。
一緒に行った北勝富士ファンは大画面の熱戦に大喜び。
大関時代の髙安のパンパンに張った身体は最高にかっこいい。
もう何場所も前の取組なのだから既に結果を知ってるはずなのに、大画面で見ると肉がぶつかる音や張り手の威力に驚き、勝負がついた瞬間に映像の中の観客と一緒にあー!とかワー!とか、つい言ってしまう。
場所直前開場前のシーンとした国技館から、お客さんがワイワイと入場したり親方や着ぐるみと記念撮影をするシーンの対比が素晴らしかった。
大相撲って、本場所ってやっぱりお祭りなんだなと実感。
今はコロナ渦で拍手のみだけど、やっぱり漏れ聞こえる悲鳴は楽しいし、映像でも満員の声援や歓声、熱気はボルテージを高めてくれる。
観賞後はまるで本場所観戦して来たみたいに気分が昂っていたし、前の回の観客も帰り道とても興奮してる様子だった。
いつか8K放送のライブビューイングを映画館で見てみたい。

本編
妙義龍のトレーニングシーン、隆起する太ももとふくらはぎの筋肉の凄まじさ、迫力。
その隆々とした下半身に思わず溜息が漏れる。
境川部屋の稽古場の熱気、関取衆の強さ。
豊響のぶちかましの音、佐田の海胸からいくのに下がらない、妙義龍の瞬発力、それでも叶わない豪栄道の相撲力。
上腕二頭筋の部分断裂した豪栄道が顔面蒼白で、断裂で凹んだ部分を無言で揉んだり抑えたりするシーンは痛ましい。
境川の稽古は本当に人数も多く、迫力がある。
ムカデで並んだだけで土俵半周以上の力士がいるのは力士数の少ない部屋からするとかなり羨ましい。
豊翔くんがかなり熱心に稽古していた。
華の富士くんだろうか?仕事だからと言ってたのが印象的。

稽古場で竹刀を手放さなかった高田川親方が、ここ2、3年で稽古方針を変えて手取り足取り指導するようになったと聞いて驚いた。
高田川親方の「霧の中の光になれたらいい」「親方の教えでも8割しか信じなくて良い、あとの2割は自分で編み出せ」という言葉は今の稽古方針だからこそ出てきた言葉だと思う。
慎重に言葉を選ぶ痩せ我慢の豪栄道と違い、竜電はとても朗らかで軽い口調。
言葉にも気負ったところや飾り気がない。
竜電の「努力を積み重ねる」「諦めない」は竜電の今まで重ねた怪我の度合いから言ってとても重たい意味で、しかしそれを何でもない風に言う。

厳しい稽古や本場所の合間の、のどかな日常シーンも良かった。
自転車で出かける力士、焼肉を際限なく掻っ込む姿、部屋の関取を応援する幕下たち。
どれをとっても癒される。
櫻さんのつくるちゃんこは本当に美味しそうだった。
竜電の奥さんの、幕下からビールを飲みながら観戦して、いつの間にか寝てて取組が終わってると言うのは、最高の休日の過ごし方だな。


今回はTBSのディレクターが初心者の目線で撮影した作品だったけど、今度はNHKがこれくらいの機材を使って誰かを密着取材してほしい。
以前みた旭大星のドキュメンタリー「辛抱」とは全く違い、ドキュメンタリーの映像や音の迫力がここまで満足感に影響するとは思わなかった。

ただひとつ注意事項がある。
迫力ある映像で怪我するシーンを見るのはかなり辛い。
特に千代の国の痙攣する足は思わず目を覆ってしまった。
輝の頭突き(頭と両手の3点で何度もかましてた)で佐田の海のおでこがグチャッとなるのも、こっちの顔が歪む。

でも応援する力士の勝敗に一喜一憂し、心が揺さぶられすぎていつも憂鬱ですらある場所前が、こんなにも楽しみな気持ちで迎えられるのはいつ振りだろう。
少なくともあともう1回くらいは映画館で鑑賞したい。
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