クロスケ

愛のまなざしをのクロスケのレビュー・感想・評価

愛のまなざしを(2020年製作の映画)
4.1
万田邦敏と珠実のコンビがまたしても、男女のあわいに蠢く魅力的なサスペンスを撮ってくれました。

とにかく、一組の男女を同一のショットに収めるのが抜群に上手い。そのショットの繋ぎも、凝りに凝っている上に的確極まりない。
こういう画を見ると、映画を観てるんだなぁという実感が湧きます。

杉野希妃の横顔のクローズアップを導入として始まるクライマックスの件は、なかなか見ごたえがありました。ソファを跳び越える杉野希妃を真上から捉えたショットとそれと前後する画面の連なりが見事なアクションを形成していて、思わず胸が踊ります。

そして、杉野希妃が懊悩する仲村トオルの傍らに立ち、彼の肩にそっと手を添えるミドルショットに迸る艶かしさは只事ではありません。映画の冒頭でも紹介されていたことからも、その動作の重要性が窺えます。そのことを証明するように同じようなショットが何度も登場します。
言うまでもなく、仲村トオルが演じるタカシの肩や背中を撫でる女の手は、アヤコだけではなく、亡き妻カオルの存在を暗示するものでもあります。

薄暗がりの中から、カオル役の中村ゆりの声が聞こえてくるたびに、あれ?これ、ホラー映画だっけ?と錯覚するほど背筋がゾクゾクする感覚を覚えました。ふと、万田珠実は脚本家の一人として『死国』という作品に参加していたことを思い出しました。
男女の愛憎はサスペンスやホラーというジャンルに接続しやすいのだなぁと、改めて感じた次第です。
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