JunichiOoya

結びの島のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

結びの島(2020年製作の映画)
5.0
勤務医生活に終止符を打ち、壮年になってから故郷の周防大島で地域医療の道に進んだ岡原仁志医師のまことににパワフルな日常を追うドキュメンタリー。

地域医療、在宅医療、緩和ケアなんかがキーワードなんだと思う。

人口15,000人、高齢化率54%(!!)の島の医療がどんなものなのか、描かれるドクター以外の地域医療従事者(ドクター)はどんな方々なのか、そこには安易な想像を許さない壮絶な現実があるのだと思う。

とは言いながら、映し出されるのはおっとりと緩めの人間関係(医師と患者という間柄以前に人と人、という素の「人間関係」)。診察の後に無闇矢鱈と患者や家族と抱き合う(ハグするというらしいが)独特の人間関係形成力…。

『痛くない死に方』や『けったいな町医者』で描かれる長尾和宏医師の奮闘にも通じる「仁術」としての医療を目の当たりにした。

岡原医師は「日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団(ホスピス財団)」を中心に活動なさっておられ、いわゆる学会(医療=治療=管と機械に繋がれた延命に傾きがちだと言われがち)とは別ベクトルで仕事をしておられるとのこと。

そして時として、患者への医療をを凌ぐ「家族の援助」への注力が特徴になる。
病気を診るのではなく人を診る、いや「家族を診る」というところに強い決意が伺えた。(ここも長尾和宏医師と共通する様に思えた)

自身の父親を看取るについて、胃ろうを施し、気管切開で言葉を奪い、急激にひたすらに痩せ衰えさせてしまった、その流れに想いをいたしている…。
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