まえだ

すべてをかけて:民主主義を守る戦いのまえだのレビュー・感想・評価

4.0
2020年のジョージア州知事選での共和党候補ケンプと民主党候補エイブラムスとの戦いを基軸として、アメリカの選挙制度における投票抑圧の実態について歴史を紐解きながら伝える良質なドキュメンタリー。

ジムクロウ法の敷かれる中、理不尽な識字検査や人頭税を取り入れた「ミシシッピ・プラン」によって黒人が間接的に投票権を奪われていた時代から、1965年エドマンドペタス橋での公民権運動の大行進によって起きた「血の日曜日事件」を経て黒人及び女性・先住民族やマイノリティが文字通り命をかけて投票権を勝ち取ってきた歴史を振り返る。

だがこれはすでに終わった栄光のストーリーではなく、冒頭のジョージア州知事選や現代のさまざまな選挙制度においてその抑圧は今でも行われているということを浮き彫りにする。最高裁による投票権法の一部廃止、候補者であるケンプが選挙管理を統括するという異常さ、21世紀のジムクロウ法とも言われる有権者ID法、理不尽な区分け、恣意的な選挙人名簿からの除外、そして投票所の閉鎖等々。

だがそれでも未来を変えようと選挙人登録を呼びかける若者の姿や、草の根の活動を続けるステイシー・エイブラムスの姿に、民主主義を守るための戦いは終わることはないと勇気づけられる。
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