ヒラツカ

激怒のヒラツカのレビュー・感想・評価

激怒(2022年製作の映画)
3.2
高橋ヨシキの監督デビュー作。これでこの方には「商業映画を撮ったこと無いくせに、なにが映画評論家だよ」というカウンターパンチは効かなくなったのではないだろうか。『1984』とか『ブレードランナー』、『図書館戦争』などに類する全体主義のディストピアが舞台で、自粛警察といった偏向的な正義がSNS上で横行する現代においても、それに警鐘を鳴らすというのは、まさに納得しやすいテーマ。全体的に戯画的に寄り、官僚主義や監視社会、女性蔑視や同調圧力なんかに怒りを向けつつ、無軌道だけど純粋な若者には温かい愛情を注ぐ。アダム・ドライバーみたいな顔をした新署長(元部下)が、船長みたいな真っ白な制服を着てるのには笑った。
80年代ホラーのころのリアリティレベルに目盛りを合わせてるわけだし、そもそも低予算なので、いろいろ補正して観なきゃいけないとはわかっているが、でもアクションシーンがしょぼいのは、どうしても気になったなあ。中ボスたちはいいんだけど、雑魚たちが妙に個性を持っているのが見づらいと思った。一方で、骨が出ちゃうようなゴア表現は、この時代に見ても古びないのが不思議。ところどころCGで血しぶきを足していたけど、血糊まみれの顔面にはかなわないところがある。『ファイト・クラブ』みたいなラストシーンも好みでした。