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オールドのmalのレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
4.0
シャマラン監督はサスペンスやスリラーを題材としながらヒューマンドラマを描いている、と思ってから氏の作品がとても楽しめるようになりました。どんでん返しや斬新な設定など、そういうのは言わば楽しむためのスパイスにすぎず、映画の肝ではない気がします。彼はどちらかと言えば哲学や人生などを描きたいのかなと。とは言え本作、粗はありますが展開とオチに整合性があるのでモヤモヤすることは少ないかも。
急速に進行する老いと言う設定に従って、話のテンポもめちゃくちゃ良いです。というか、次から次へと事件が起こるのでテンポ早すぎる感も。(私は好きですが)
カメラワークがめちゃくちゃ良くて、あえて全部を見せなかったり、焦らしてきたり、カメラを行ったり来たりさせることで変化をだしてきたりと、素晴らしいです。

まさに人生の縮図を描いている作品。逃げようとしても不可能、誰にでも平等に成長と老いが来ることを感じさせてくれる作品ですね。安らかに天命を全うできることの尊さと幸運を思います。
殺し合いに遭遇したり、土左衛門を発見したりする人はあまりいないでしょうが、遊びでのアレでああなってしまったり、パートナーに先立たれたり、病気が出てきたりとかは人生のイベントとしてありふれている。何気ない一日の延長に人生があるし、一瞬を積み重ねて結局死ぬのが生物なわけで。教育は大事だと思えるシーンがある一方で、知恵と勇気があっても死に繋がる失敗に至ることだってあるのを見せてくるのが面白い。

傷は瞬時に塞がるのに(凝固障害と言えど)鼻血が全然止まらない不思議とか腫瘍がキレイにスポーンと取れるところとか栄養と代謝の関係はどうなってんのかとか、突っ込みどころの多い設定ではあります!ここは笑って見過ごしたい…。ファンタジー設定ということで。でも統合失調症に対する誤解はひどい。こればかりは本当に良くないです。確かに統合失調症患者が起こす暴力事件のオッズ比は高いという研究はあるものの(DOI: 10.1001/jamapsychiatry.2021.3721、 DOI: 10.1371 / journal.pmed.1000120)、積極的に殺傷事件を起こすかはレベルの違う話ですし、差別につながると思うので、本作の描写に関しては否定的な立場を取らせていただきます。
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