キューブフォーム

ダーク・アンド・ウィケッドのキューブフォームのレビュー・感想・評価

4.0
傑作。A24のIt comes at nightのような観客に想像を委ねる作り。

「信仰心の有無は、獲物を狙う捕食者にとっては関係がない」
この一言が本作のテーマの一端を表す。
出会った者をかたっぱしから呪う。とくに強制的に自殺させようとしてくるのだから、クリスチャンにとっては最も出会いたくない悪魔だ。

一見、とっつきづらい作りだが、古き良きアメリカの崩壊を、一家の崩壊になぞらえて描いているのだと感じた。死にいく国の精神(父)を狙って悪魔が忍びよるが、母や子になすすべもなく、全員が自殺へと向かう様は、メンタルイシューが蔓延る都会の風景をも想起させる。

このように象徴的に読み解くこともできるし、シカゴの神父に電話をかけるシーンをはじめ、説明できないシーンも多く、直感的に恐怖を堪能できもする。ルイーズの実存がわからなくなる電話シーンは今作でも屈指の気持ち悪さで、呪い、を感じた。

いいものを見た。この監督は、追う価値がある。

少人数のスタッフ・キャストが作り上げた、精緻な地獄を、シネコンの大きめのスクリーンでぜひ堪能してほしい。