映画として面白いけど、好きになれないというのが正直なところかなー。
原作は読んでないけどいくつかの短編を組み合わせているそう。
そのためか分からないけど、いくつかテーマが同時に走ってる印象を受けた。
メインとなるのはいかにも春樹の小説にありそうな、大きな喪失からアイデンティティを取り戻す男の話。自分を演じてた役者が、やっと自分自身になれたって構造はシンプルで分かりやすい。歳とったからかもしれないが、喪失感の甘さが鼻につくし、現実にはおっさんの横に一緒に悲しんでくれる若い女の子はいないでしょって思ってしまう。
一方で、コミュニケーションとは何かみたいな問いが意識されてる気もした。言葉が通じないなかの芝居や、亡くなった妻のカセットテープの声を相手にした演技、といったところから伝わってきたが、意味内容がなくても応答するコミュニケーションは可能でそこで何かが生まれることもある。その路線で考えると、話し合わずにムカつく他人を殴って死なせちゃった若い俳優の立ち位置が面白い。ラストシーンは人との交わりの中で受け取ったものを抱えて生きていく感じが、いいなと思えた。
あと、車＝女だったりタバコ＝弔いだったり、わかりやすいメタファーが多い印象。
とりあえず原作読むかなぁ。
