ナガサワ

あの夜、マイアミでのナガサワのレビュー・感想・評価

あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)
4.3
マルコムX、モハメドアリ、サムクック、ジムブラウンの4人が公民権運動について語り合った一晩。

近年あらゆる差別について、たった一つだけ言えるのがとにかく複雑で、ストレートな回答を出すことができなくなっているということ。
とくに顕著なのはLGBT差別。
「性別は1人1つ」って言っていたのは誰だったか忘れたけど、ただ型に当てはめるような弱者の救済方法は難しい。
LGBT差別を無くそうと叫んだところで、単純なLGBTの枠に当てはまらない性を持つ人だっている。
だから差別をなくすためには多様性を理解する必要がある。

そしてこの映画を見て初めて気づいたんだけど、黒人差別も同じだ。
誰しも黒人差別は無くなればいいと思っている。
でもその黒人ってひとまとめにしていいのだろうか。
単純に白と黒の2つで切り分けるのではなく、もっと複雑な多様性という考えを取り入れる必要があるのではないだろうか。
黒人の中にもマルコムXのように肌が明るい人、ジムブラウンのように肌が暗い人もいる。
それだって明と暗の二つに分けることはできない。
グラデーションだ。

彼らは4人とも黒人差別をなくしたいという思いは共通なはずなのに、激しく口論する。
彼らの中にある黒人、救済の定義が多様であるからだ。
どこまでも答えの出ない議論が続いていく。
そこがこの映画の一番面白いところだし、辛く悲しいところでもある。
口論の激しさがピークに達した時にボブディランの「風に吹かれて」が流れる。
思わず涙が溢れてしまった。
「答えは風に吹かれている」のだ。
今は風の中かもしれないけれど、確かに答えはあるのだ。