鬼島一郎

アース・フォール JIU JITSUの鬼島一郎のレビュー・感想・評価

アース・フォール JIU JITSU(2020年製作の映画)
4.5
総製作費30億円。
キャストにはニコラス・ケイジ、トニー・ジャー、フランク・グリロ、アラン・ムーシ、ジュジュ・チャン、リック・ユーン、マリーズ・クランプ、リガン・マチャド、他云々。

武術指導にホイス・グレイシーが噛んでたり、ざっとキャスト一覧見ても武術家・格闘家がザルに山盛り。
 
おおざっぱな設定は、
『彗星到来の周期にあわせて襲来する宇宙人を満足いくまで武器格闘技を駆使して命懸けで接待する。毎度生贄に選ばれた(?)猛者たちは死んだり逃げたりなわけだが、宇宙人は満足すれば(多分)帰っていく(はずだ)けれど満足できなきゃ気の済むまで殺戮してまわっちゃうので少数で満足いただけるよう頑張らなきゃならない。今年も来ちゃったので今回はいつにもまして気合入れて勝つ、っつか野郎ぶち殺してやりますよ』。
 
お目当てのニコケイは主人公でもない……そもそもブルースウィルスの代役っぽいけど。
どこか狂人じみているのに全体通して台詞のほとんどをニコケイ一人で被ってて、彼なしじゃ話がまわらない中心ポジをがっちりキープしており確かにニコケイの映画だなと唸らされる。 うなされる、かも知れない。
柔術って言ってんのニコケイだけだかんね……

トニージャーはモンハン前の予習復習に最適。そうそうこれよこの銃弾の中、無傷で淡々と膝で砕く音とか肘で極める音たてて人間狩りしていく通り魔っぷり。パルクール混じりの必殺アクションはカメラも追いつけず酔いそうなほどブレる。
致命傷を与えても瞬時に再生する宇宙人相手に主役でもないのに無敵っぷりをどこまで発揮できるのか?そこに納得するかどうかもキーポイントかと。
 
アランムーシはキックボクサーリベンジの時から特に変わらない印象で、主役なのに脇のベテランに張り合うことなく主張することもなく。
体格も顔立ちも文句なしでアクションも立派にこなすのに、今回輪をかけて最初っから最後の方まで記憶喪失の重傷者なわけで……そんな主役に何を期待しろというのか。
 
フランクグリロは残念ながらアランムーシとどっこいで、特に目立つ活躍もなければ悪目立ちするほども何もせず。というか本当にトニージャー含めて9人の選りすぐりの格闘家たち終始ほぼ無言だし、主人公記憶喪失なのに誰も説明もないし、それぞれ好悪の感情表現もろくにない。
マリーズクランプの棒術?槍術?シーンは本当に格好良かったし、リガンマチャドが宇宙人相手に間接狙ったり絞めようとしたりしてるのは正直面白かった。
宇宙人が剣構える前に礼するところとか、ついカッとなって手裏剣乱打しちゃうところとか、冷やかし半分で透明になって遠距離から死なない電撃とばしてくるところとかも、通しで見ればまったく意味わからんけどその場その場ではちょっと面白い。わくわくしちゃう。
 
つまるところ誰も今作の脚本に何らかの整合性だとか納得だとかを求めるべきではないし、キャストがとにかく意味わからんけど窮地に立たされてどう頑張るかを手に汗握って見守るべきだと思うわけで、記憶喪失の主人公よろしくアタマ空っぽでアクション眺めてスカーっとすれば満足できると思うのです。
良かった悪かったはさておき個人的には今年ベストの候補に入れても良い好きな一本なんだけど、好きのポイントが一般的にオススメするための材料にならないのがつらいところですなぁ……
鬼島一郎

鬼島一郎