柴田龍

浅草キッドの柴田龍のレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
4.6
惚れ合う芸をこれでもかと魅せてくる映画。
監督もいいのだろうが、なによりやっぱり二人がいい。
二人の間がいい。
セリフやアクションの間に、スポっときちんと落ちていける。

師匠と弟子の関係性としてものすごく特殊な部類ではなかろうか。
どちらも、世に背を向けるスタイルを貫きながら世を沸かせるしか能がなく、認め合いながら上りと下りと分かれる調子。浅草の星の元で多くの芸人とクロスフェードしていくたけしの人生が、芸人深見から頑健な地盤を得ていたことで燦然と輝いていく流れに、演芸場からテレビへというエンタメの転換期にそこかしこにあったであろう、芸人の生き様の厳しさを、切り返しの妙、楽しさと共に伝えてくる映画だ。

泣かせにかかる見え透いたシーンなど一分もないのに、胸を突き上げ、こみ上げるシーンが多数あり、まったく監督劇団ひとりの7年にわたる制作への執念と、ひるまず演じ切った大泉、柳楽の2人に、とにかく脱帽。

素晴らしい。
柴田龍

柴田龍