おかだ

くれなずめのおかだのレビュー・感想・評価

くれなずめ(2021年製作の映画)
3.9
高密度多湿ホモソムービー


梅雨ってこんな容赦無かったっけ?
雨量がとんでもなさすぎてレザーソールの革靴は間違っても使えないし、ラバーソールの革靴も浸水するなど深刻な被害を受けている昨今。
雨天はサンダル通勤を許可してほしい。誰に言えばいいのこれは。

さて、いよいよ7月になりましたということで、早いもので2021年の上半期が終了しました。

私に関しては、年間の新作映画館鑑賞本数目標100本ということで懲りもせず邁進しておる訳ですが、上半期終了時点での結果は25本。正直きびしい。
25本しか見ていないながら総括すると、やはりコロナ禍の影響もあって大作が悉く不発の寂しい期間でした。特に洋画はここ数年でも稀に見る不作の年だったんじゃあないかな。
アカデミー賞の主要部門ノミネート作品群なんかにも顕著でしたが、なんとも元気のない作品が目立った半年間だったように思います。
ディズニーを始めNetflixやAmazon primeがオリジナル作品を自社サービスで囲い始めたことも大きな要因でしょうが、映画館での上映を前提としない120分弱のコンテンツを果たして映画と呼ぶべきなのでしょうか。

一方で、絶好調の今泉力哉や社会現象にもなった「花束みたいな〜」を筆頭に、中堅規模の邦画たちの奮闘が頼もしかった半年でもあった。
普段あんまり映画を見ない人に限って、何故か邦画を見限っている人も多いですが、派手さは無くとも面白い映画が結構多いのでぜひ注目してほしいと思っています。
ちなみに昨年公開された「37セカンズ」と「ソワレ」は特に、折に触れてPRしていきたい傑作でした。


という訳で、ようやく「くれなずめ」。
上述した、派手さは無いが観た後に確実に何かを残してくれるような素晴らしい映画でした。

あらすじは、高校時代に帰宅部同士でつるんでいた6人組が、友人の結婚式の余興を頼まれて久しぶりに集結してグダグダやるというもの。

冒頭ロングテイクで映される式場下見シーンは、散り散りになって久しぶりに集まった学生時代の友人たちという絶妙な距離感を上手く表現できており味わい深い。

この間の抜けた感じは作品全体の構成にも通底しており、通常だったら肝心の披露宴での余興をクライマックスに配置するのだろうが今作はそこをすっ飛ばし、2次会会場までの移動という地味な場面を中心に据える。

ネタバレにもならないと思うので言ってしまうと、実は既に亡くなっている成田凌の記憶と整理をつける彼らのみっともない様子が胸を打つ。

冒頭の式場下見を始め、現在の時間軸のシーンはなるべく長回しで淡々と、回想シーンはわりとキラキラと主観的に、それぞれ撮り分けられていたのはポイントか。

そしてクライマックスで流されるファンタジー色強めの赤フンダンスシーン。
あまり上手い展開とは言えないが、やはりあの圧倒的な熱量に持っていかれてシクシク泣いてしまう。ウルフルズ強し。

そしてラストはあのマジックアワーの夕焼け。
くれなずむ中途半端な時間を切り取った今作そのものを表現した素敵な幕引きだったと思う。


そしてそんな今作の評価を分ける大きなポイントは、あの見ていられないほど無邪気で湿度の高いホモソーシャル感に対する抗体の有無でしょう。

冴えない男たちが集まって、つまらんノリでわちゃわちゃとやってるあの感じ。
赤フンまで履いてしかも成田凌の質量を無視するもんだからものすごく無理のある密着配置にもなっているため、死ぬほど男臭い。

で、これ、個人的には痛いぐらい身に覚えがあるもんですから、目を覆いたくなるくらい見ていて恥ずかしかったし、気持ちが分かり過ぎてどうしても刺さってしょうがない。

特にあの、カラオケで城田優が乗り込んでくるあのシーンね。
イケイケの陽キャが、学校行事の中心を担い、男女で打ち上げを行なっている。
そんな裏で、ひっそりと、おそらくあまりウケなかったであろうコントの打ち上げをする帰宅部集団。
そこに乗り込んでこられるあの緊張感、そして何より、面白さでは負けていないという根拠のない誇りだけは捨てられないというみっともなさ。
もっと言うと、そんなしょーもない一連を、何年も経ってからもずっと語り合ってヘラヘラ笑ってる感じ。
俺の映画やないか。


そんなこんなで役者勢に関しては、城田優の悪気のない嫌な奴感も良し、若葉竜也のカメレオンぶりや高良健吾と成田凌の情け無さも面白い。
そして個人的なMVPは楽しそうにキレ芸を演じていたコメディエンヌとしての前田敦子。
登場シーンほぼキレ通しでさすがに笑ってしまった。お見事。
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