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BLUE/ブルーのkakakaのレビュー・感想・評価

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)
4.3
監督自身30年以上のボクシングキャリアを持ち、曰く、ショーアップされたボクシング映画ではなく、ボクサーが見て感動出来る作品を作りたかったとのこと。
思えば、タイトルマッチすらテレビ中継されない場合もある今のボクシング界は、単なる名声やお金欲しさならば、とてもじゃないが割に合わないスポーツだ。
ハードな練習量に加え体重制限、命の危険すら十分にあることを本作は描いている。
それでも何故ボクシングを続けるのか?
それを瓜ちゃんこと、瓜田の姿にのせて描いている。
負けが込み、後輩からも影口叩かれる先の見えないプロボクサー瓜田は、それでも微笑み、悲しみも憎しみも受け流す姿は、差詰、聖人のようだ。
劇中、暗い影が差す度、瓜田の微笑みに救われる。
しかし、その瓜ちゃんの笑顔もやがて、ボクシングを捨てられない自分を生かす為に顔に張り付いた処世術のようなものと知れる。試合後に一人帰るアパートの侘しさよ。
楢崎、小川の試合を二階の欄干から見つめる瓜田。その頬に流れる一筋の涙は、諦めるしかなかったもの、諦めたくなかったものの結晶だ。それはとても悲しく、美しい。
何故ボクシングを続けるのか?
それは単純だ。
ただ好きだから。これしか自分の青春を生かす方法を知らないから。
ラストの瓜ちゃんのゴム長を履いたステップは、生きることを選んだ気高い明日への足音だ。
小川が初のタイトルマッチに向け、ロードワーク中、靄の立ち込める河川敷に消える画は、暗中模索、暗夜行路、本当に素晴らしいシーンだった。あの画が撮れた時点で本作の勝利は約束されている。

最後に竹原ピストルの主題歌が胸を打つ。
「足跡を残したいんじゃない、足音を鳴らしていたいだけ。」
映画の当て書きだろうか。
素敵な歌詞を書くなぁ。
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